「G・I にて U」-02 ------------------------------------------------------------------------ ジンと城へ戻れば、皆忙しそうに走り回ってる。 ゲーム発売からの3年間。 それぞれの担当分野で蓄積したデータをジンを交えて分析し、改善点を 洗い出すためだ。それぞれの担当は、大体こんな感じだ。 システムのプログラミングはリスト。 ゲームプログラムの全てを動かす、この島の心臓と言っても良いリストのパソコンは、 小さな旧型のデスクトップが一台のみ。 大昔に流行ったモニターとPC本体が一体になっているタイプだ。 もちろん大型の最新コンピュータも城にはあるし、皆でデータをいじる時はリストの パソコンを大型のにつなげる。 しかし彼一人で作業する時は、中世ヨーロッパ風の優雅な彼の個室で小さな書見机に 向かい、全ての作業を魔法のパソコン一台で行っている。 一体どういう仕掛けになってるんだか‥‥。 ドゥーンは島内の設備担当。 森や道路の区画整理から建築物の設計建造、内装に什器に家具まで全部、彼が 中心になって手配した。 彼は建築ハンターで、世界中の土建業界の顔役だから。 クギやボルトを一本も使わずに建てられた大昔の木造宮殿や、石を四角錘に積んだ 巨大な王様の墓を発見し、建築家の視点から謎を解き明かしている。 彼が一声かければ、世界中の有名建築デザイナー、都市計画やランドスケープの エキスパート、一流の家具職人が集まる。 お陰で小さいといっても総面積80万平方kmはあるこの島の、全ての施工が 冗談みたいな価格で行われた。 ゲーム内には俺も知らないトラップが仕掛けられたお化け屋敷みたいな家が いっぱいあるけど、そんなのはドゥーン自身が図面をひいて、ジンとドゥーンの 二人でコッソリおっ建てたものと思って差し支えない。 皆でドゥーンを囲んで、やいのやいのと建物のデザインしたっけ。 恋愛都市アイアイなんかで俺が口挟むと、お前はセンスが無いってよく笑われたよな。 でも体育館の話になると、キッチリ全部俺の意見を取り入れてくれて、 だからあの体育館は、俺の自慢だ。 ちなみに正面の壁に飾ったデカい壁画もドゥーンが描いた。 壁がのっぺらぼうじゃ味気ないから、海賊のアジトっぽい絵を描いてやると言って。 くわえタバコのイカした猫ギャング。ジンは笑ったけど、俺はスゲー気に入っている。 対外的な島の防御は、エレナとイータの双子の仕事だ。 変化系の能力で、念の円の表面を微弱な電磁シールドに変える。 一人一人の円の範囲はそれほど広くないが、双子が相対して位置した時、爆発的に 円の範囲が広がる。そう、この島を包み余るほどに。 どんな微細な虫だって、二人に気づかれずグリードアイランドへ侵入することは出来ない。 何かの拍子で侵入できても、円の効果で島内のささいな異変も見逃されることはない。 二人が以前暮らしていたアパートに、覗きだか下着ドロだかが多発した際に、そういう 能力になってしまったと言っていた。 島の東西の端にある出入口に、二人はそれぞれ島の中心を向いて座っている。 ジンが神字作りの名人を連れてきて、シールドを固定する事に成功したので、 彼女たちが席を離れても島は常に守られている。 といっても、やはり本人達がリアルタイムで作り出すシールドよりは精度が落ちるから、 おちおちボーイフレンドと旅行にも行けないと、いつもボヤいている。 彼女たちが異変を察知すると、グリードアイランド城と体育館に同時に連絡が入る。 そこでやっと、実働部隊の俺の出番だ。 プレイヤーや侵入者と直接対峙するのは、基本的に俺だけだ。 おおむねゲームの流れを理解し、おそらくはクリア間近な連中が、いずれ俺の受け持つ カードを求めてやってくる。 しかし恐ろしくプレイヤーの人間性が試される課題をクリアしないと 俺のカードは入手できない。 妙な奴らが、プログラムを操作している城へなだれ込んでもマズいしな。 つまり、俺が見極めるのだ。そいつらが、ゲームをクリアさせても良い奴かどうかを。 もちろんヤバい奴と判断したところで、俺が殺られちまったら話にならない。 俺が防波堤になって食い止めなきゃ意味が無いのだ。 重要な役目だ。頼んだぜ、レイザー! あの時のジンの言葉を、忘れた日はない。 →Next (050411) ------------------------------------------------------------------------ →トップ |