「頑張れカイト君」-04 ------------------------------------------------------------------------ 「じゃあさ、次行っていい?」 「おぅ、ジャンジャン行け」 「はい‥‥じゃない、その、大人しくしてろよ?」 「‥‥ハイハイ」 カイトの指がジーンズのボタンへかかる。 「お、いよいよだな」 「そうだね‥‥って、黙ってろってばっ!!」 ジーンズのボタンは固い。白い指先を赤くして悪戦苦闘している。 しかもその下はジッパーではなくフライボタンだ。 俺がやろうか? 言いかけたが、止めにした。甘やかすのは良くない。 それなりに厳しく接してきたつもりだったが、結果としては こんな強姦の一つも満足にできない男になっちまったんだから‥‥。 俺のせいだよな‥‥。もっとこう、男ってもんをガッツリ仕込むべきだったか。 ‥‥こいつがオカマみたいな男になっちまったらどうしよう‥‥‥。 いや、本人がそれで幸せってんなら、いいんだけどさ。 俺の育て方がマズいせいなら、何とか鍛えなおさねぇと‥‥。 目を閉じ、さらに内省を深めていると、カイトはやっとボタンを外し終えたようだ。 確信に満ちた動作でウェストに手がかかる。 引き下げようとするがジーンズはビクとも動かない。 「あーあーダメだろ、そのままじゃ。百年たっても降ろせねぇぞ」 「え、そうなの‥‥?」 「え、そうなの‥‥? じゃ、ねぇだろがっ!! 毎晩毎晩、一体お前は俺の何を見てきたんだっ!!」 罪悪感と相まって苛ついた声を上げるとカイトはビクリと首を竦ませ そのまま動けなくなる。脅えた目でジンの様子を伺っている。 あり得ないほど弱気だったり強気だったり、そして鈍かったり。 不安定なカイトに気づいて慌てて声を和らげた。 「‥‥あ、その‥‥‥悪かったよ、怒鳴って。男を犯るなんて初めてだもんな。 うん、誰にでも初めてって時はあるし上手く出来なくたって仕方ない。 俺が大人気なかった。謝るから続けろ」 「‥‥‥はい」 いくら普通の状態じゃないとはいえ‥‥‥やっぱ甘いな。 俺って結構ダメな奴かも‥‥。 思いつつ、つい懇切丁寧に指導してしまう。 「あのな、お前の膝を俺のケツの下に入れろ。もっとグイグイ。うん、そう。 そうしたら腰が持ち上がるだろ?上手く持ち上がらなかったら肩に膝裏担ぐんだよ。 いや、今回はいい。相手の抵抗が激しい時だけだ。そしたらジーンズの左右に両手掛ける。 片手だけじゃ引っかかっちまってダメだからな? 面倒でも両手使って左右交互に ちょっとづつずらすように降ろしてく。んで腰骨の一番高いトコ越えたら‥‥‥ 一気にズリ下げろっ!!」 ジンの気合に、焼け気味のカイトが渾身の力で引っ張ると ジーンズは、見事に膝の辺りまでズリ下がった。 「よしよし、やればできるじゃねーかっ!」 「‥‥はいっ!」 カイトは輝くような笑顔をジンに向けた。 完全に主旨が変わってるつーか、こんなんでいいのかなぁ‥‥。 ‥‥‥‥‥まぁいいか。いいよな、別に。 カイトが笑えばジンも楽しい気分になる。いつもいつもそうだったし、 きっとそれはカイトも同じだっただろう。 自分の感情を左右できる者など今までそうは居なかった。 「‥‥カイト」 嬉しげな様子でズリズリとジーンズをジンの足首から抜いていたカイトが 顔を上げる。首に手を添え引き寄せると、優しく口付けた。 するとカイトは慌てて体を引き離す。 「‥‥嫌だったか?」 「‥‥‥‥」 「なぁ、カイト」 焦れて呼びかけると耳元まで紅く染めた顔をブンブンと振る。 「ダメなんだって!! 今日は‥‥今日は、俺が‥‥」 「そっか、そうだったな」 やはり念で操作されてるというのではなさそうだ。こいつの練はそこそこ一人前だ。 相当な実力者でなければそれを打ち破って操るのは無理だし、そんな相手ならこんな 中途半端なことにはならないだろう。ストレスで精神が錯乱してるというのでもない。 根拠もなく強く思い込んでいる様はどうやら暗示の線が濃い。 薬じゃないな。催眠術だ。しかも術者は素人だ。 解くのは簡単だが‥‥‥。 カイトの異常の原因は見当がついた。ど素人の暗示など、簡単に解ける。 そう、いつでも解ける。 今すぐでも‥‥‥‥もう少しこの状況を楽しんでからでも。 「さ、続きだ。気合入れていこうぜ?」 「はいっ!」 カイトは嬉々としてジンの下着に手をかけた。 →Next                     (041111) ------------------------------------------------------------------------ →トップ