「頑張れカイト君」-05
------------------------------------------------------------------------
返事は大層威勢が良かったが、中々その先に進まない。
カイトは下着のゴムを握りしまたまま、モジモジとまたがったままだ。
「‥‥どうした?」
いや、俺が心配することじゃねぇんだが。
「うん‥‥」
「どうした、具合悪いか?大丈夫か?」
「体は‥‥平気だけど‥‥‥」
とても行為を無理強いする者とされる者の会話とは思えない。
思えば始めた時からそうだけど。
「あの‥‥‥‥‥‥明かり、消そうか」
「は?」
「‥‥‥恥ずかしいだろ?」
そういう自分の方がずっと恥ずかしげに頬を染めて俯く。そんなカイトの
顔を見ると自分がとてつもなく猥褻な生き物に思えてくるが
それで自己嫌悪に陥るような奴は馬鹿らしいとも思う。
どんな時も、どんな場所でも、絶対に変わらない事がある。
それは、俺が俺であることだ。
ロクデナシ上等、これが俺の生きる道だ。
ジンは寝そべったまま軽く顎をあげると、先ほどまでとは打って変わった
冷めた口調でカイトに声をかけた。
「‥‥‥お前、そうやって俺を気遣うふりして、実は結構鬼畜だよな」
「え‥‥‥えぇ!?」
カイトは真実、ジンが何を言っているのか分からない。
「だってさー。俺一人素っ裸にされてんだぜ? 暗いの明るいのより、
そっちの方がよっぽど恥ずかしいだろが。
優しくしてくれるってからOKしたのに酷ぇよな」
「そんな、俺、そんなつもりじゃ‥‥」
「じゃあ脱げよ」
「‥‥‥‥」
「‥‥脱げねぇの? 相手を素っ裸にして自分はキッチリ着込んだままなんて
そりゃ興奮すんのは分かるけどさ。俺がお前にそんな真似したこと
あったか?(あったような気もするが)
ただでさえ男に犯られるなんて怖くてガタガタ震えてるってのに、
俺ってすっげーカワイソーっ!!!」
最後の部分を声を張り上げて叩きつけると、カイトがたじろぐ。
「あ―――カワイソ! 俺ってすっげぇ可哀想。このまま鬼畜な男に
いいようにされて貞操奪われんか‥‥。辱められて、虐げられて、
弄ばれて、グチョグチョにされて、それから‥‥」
「‥‥分かったよっ!!脱げばいいんだろ、脱げばっ!」
「そうそう」
投げやりに叫ぶカイトに、ニッコリと微笑む。
「‥‥嬉しそうだな、全然怖がってるように見えない」
「馬鹿だな、強がってるだけだって。察してくれよ、な?」
「‥‥‥」
ノソノソと立ち上がるとソファから2、3歩離れて背中を向ける。
上衣の裾に手をかけめくりあげると、ジンの視線は白く細い腰に釘付けになる。
「‥‥何見てんだよ」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし‥‥」
「うるさい黙れっ!!あ‥あっち向いてろ!!」
「‥っでーな、お前ってほんとケチ‥」
「ケチとかいう問題じゃないっ!!」
叫ぶなりシャツを脱ぎ払い、そのままの勢いでジンの頭に被せる。
「ふがっ‥‥おま‥何しやがんだコンニャロっ!!」
「黙れってっ!!」
思い切り上体を突き飛ばされソファの肘乗せにしたたか頭を打つ。
‥ってー‥‥このガキ、覚えてろ‥‥‥
「何か言ったかっ!?」
「いえ別に」
「乱暴になんてしたくないんだからなっ!大人しくしてろ!!」
「あーハイハイ、ワカリマシター」
心外極まりないと鼻息も荒くジンの足元にまたがる。
「‥‥あのー‥‥‥下は脱がねぇの?」
「え、うん‥‥‥‥後で脱ぐ」
「そ」
ちぇ、もーちょっとだったのに‥‥。
あからさまに鼻を鳴らすが、カイトの手が再び下着にかかり溜息を飲み込む。
‥‥うわぁ‥‥‥どうすんだろ、こいつ。
今までの流れで行くと、手順は毎晩俺がしてる通りだよな。
って事は、まずアレしてコレしてひっくり返して、こうしてああして、また返して‥‥
んで、あんなコトもこんな事も、してくれちゃったりすんのか!?
期待に胸が高鳴る。鼓動が早まる。
‥‥‥‥が、カイトの手は下着のゴムを握ったまま動く気配がない。
「お前、何グスグスやって‥‥」
焦れて顔に被さったカイトのシャツを乱暴に取り去り、挑むように上体を起こしたとき
ジンの呼吸が止まった。
→Next (040517)
------------------------------------------------------------------------
→トップ
|