「頑張れカイト君」-03
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何とか笑いを堪え黙って待つとカイトの気配が近づく。
口元に触れる柔らかな感触。
‥‥あー‥‥‥空からマシュマロが降ってきた‥‥
甘く蕩けるマシュマロの味。しかしなかなか舌で味わうことが出来ない。
微妙に唇から外れた口元にやんわりと押し付けられているままだ。
ちょっと‥‥‥‥拷問かも‥‥‥
思わず舌を出し、ペロリと一舐め。
途端に顔が離れ憤慨した声が叫ぶ。
「なっ‥‥何すんだよっ!!お、大人しくしてろって‥‥!」
「あーハイハイ、スミマセンー」
十分大人しくしてるじゃねぇか‥‥
心の中で愚痴るが、今王子様のご機嫌を損なうのは得策ではない。
「悪かったな。気を取り直して続けてくれ」
「あ、うん‥‥」
おずとシャツのボタンに手がかかる。
えー!今のでキス終わりっ!?
俺は舌も入れねぇで次に進んだことなんて無かったじゃねぇかよー!
そんなジンの不満には気づかず、カイトはボタンをはずす作業に
没頭している。
「向かい合ってボタン外すのって、案外難しいな‥‥」
悠長に独り言まで言っている。
‥‥‥夜が明けちまうと思うんだが‥‥‥‥
コッソリと薄目をあけると、カイトはしっかりと口を結び真剣な表情で
手元を見つめながら慎重にボタンを外している。
動作がいつもよりも鈍い。どことなく目も尋常でない。
何かしら異常な事態がカイトに起こっているのは間違いないが
普段は深層に隠された素の天然具合が露出しているようにも見える。
これがこいつの地だとしたら、普段のハント中の切れっぷりは
相当頑張ってるってことだよな。なんつーかまぁ、いつの日も
一生懸命な奴だよな‥‥
そんな暢気な長考が許されるほどの時が流れる。思わず眠気が差したとき
やっと全てのボタンを外し終えたカイトの満足げな息を聞いた。
「よし‥‥」
小さな掛け声と共にシャツの両襟を掴むと、えいっとばかりに
一気に開いて胸をはだけさせる。
「イヤン♪」
「ばっ‥‥!変な声出すなっっ!!」
「あーハイハイ、ゴメンナサイー」
「あっ! 誰が目を開けていいって言ったんだよっ!?」
「お、悪ぃ悪ぃ」
‥‥目ぇつぶってろなんて言われたっけ‥‥まぁいいけど‥‥‥。
しかしこいつ、一生どころか何回生まれ変わったって
強姦なんて器用(?)な真似は無理だな‥‥。
「黙って目ぇ閉じてろよ! はっ‥‥恥ずかしいだろっ!!」
「‥‥‥‥‥」
頬を紅潮させて必死に叫ぶ表情は
16歳の少年とは思えない愛らしさだ。
なんつーか、すっかり初心(うぶ)になっちまって‥‥いや、可愛いんだけどさ‥‥。
普段はもーちょっとクールっつーか、澄ましてんのにな。それともいつもは無理してんのか?
スラムで育ってそれなりの環境だったはずなんだが。
俺の育て方が悪かったか‥‥ちょっと過保護にしすぎたかもしれん。
男遊びや女遊びの一つや二つ、教えとくんだったかな。
溜息を隠し、過去を深く内省していて首元に口付けられているのに
しばらく気づかなかった。それほどに浅く、くすぐるような唇。
く、くすぐったいっ‥!
薄絹で弄られる感触は胸元へと続く。華奢な指が腰を這う。
手順が俺と全く一緒ってのが参るな‥‥。
だいぶ簡略化されてっけど。
くすぐったさとおかしさで、再び身を震わせる。
「あの、気持ちいい‥‥?」
「ん‥? あ、あぁ‥‥気持ちいいな」
「そう。良かった」
「うん、気持ちいいだけどさ、その、もーちょっと荒々しくってもいいじゃね?
ほら、男同士なんだしさ‥」
「え、そう‥?」
「うん」
カイトは口元に手を当て考え込んでいる。
こちらが目を開けてることにも気づいていない。
「そう‥‥かなぁ。俺、いっつも優しくしかされないから、分からない」
「‥‥‥っ‥!」
真顔で言われて、さすがに照れた。
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