「DRUG STORE HUNTER×HUNTER」-05 ------------------------------------------------------------------------ 肌を這う息が熱い。もう待つのはごめんとばかりに絡んだボタンを引き千切る。 すぐに胸の突起を捉えた舌先が執拗に攻め立てるが徐々に動きが緩慢になる。 肩先がグラリと揺らぐ。支える腕が力を失い、覆いかぶさる体が重くなったと思うと ジンはカイトの上に完全に崩れ落ちた。 そのまま身じろぎもせず数分間待つ。 規則的な寝息が聞こえだす。そっと頭を持ち上げてジンの瞼をじっと観察する。 指で頬をつまんでみるがピクリとも反応しない。 信じられないが‥‥上手くいったようだ。 それにしても随分効き目の早い薬だ。極めて緩やかにジンの体を脇にずらす。 改めて閉じられた瞼を凝視するが瞳は動かない。ほっと息をついて毛布を 肩まで引き上げる。 やっと眠れる‥‥。 目覚めたジンは怒るだろうが怪しげな薬屋だったからと言い訳すればよい。 うつ伏せのまま寝息をたてるジンに毛布を掛けようと手を伸ばした時だった。 手首に痛みが走り思わず顔を歪ませた。 瞬時に背中を跳ね上げベッドから逃れようするがジンは掴んだ手首を離さない。 膝裏を蹴り上げられて体が一瞬宙に浮きスプリングの効いたベッドに背中が弾む。 易々と押さえ込まれる。 「‥‥くっ‥‥‥!」 甘かった‥‥。 「おっかしいよなぁカイト、よくなる前に眠くなっちまったぜ?」 見上げると、ニヤリと笑ったジンの口の端からカプセルがのぞいている。 「ま、10年早いって言いたいとこだが‥‥お前なぁ、ちったぁ考えろよ。 カプセルが胃でそんなに早く溶けるわけねぇだろ?」 「そうだけど‥‥‥ジンさんの胃液なら溶けるかなって思ったんですよっ!!」 「‥‥っ! 俺はこう見えても人間だっ!!」 叫ぶなり唇に唇を押しあてられる。 何をされるか分かっているので決死の覚悟で歯を食いしばる。 ジンの指先がカイトの脇に伸びてコショコショとくすぐる。 「ふひゃ!」 情け無い声をあげた途端、舌でカプセルを喉奥に送り込まれた。 「んんーーーっ!!ん、ん、んむーーーーっ!」 鼻を摘まれる。足を必死でバタつかせるが無情にもカプセルは 喉元を通り過ぎる。息苦しさに涙目になった時、ジンが体を解放した。 「‥‥ケホッ!!カハッ!‥‥ハァ‥ハァ‥‥‥(涙目)」 「長いこと俺の口ん中に入れてたからな。速攻溶けるぜ」 ジンは頬杖をついて楽しげに言う。 まだ間に合う‥‥‥。 隙を見て再び脱出を図るが足首を掴まれて引き戻される。 「お前‥‥トイレ行ってゲロりたい程イヤなもんを俺に飲ませようとしたわけ?」 「‥う‥‥」 答えられずに呻くとジンはますます目を細める。 「そう暴れんなって。効き目が早くなるぜ?」 言われなくてももう頭がフラついている。体が痺れる。 瞼が鉛のように重い。 「やっぱ催眠剤か。芸がねぇなーっ!」 その顔を憎々しげに睨みながらも体がベッドに沈み込む。 「まぁ肝心なとこで嘘はつかなかったから許してやるか。 お前が言う通り、楽しい夜になりそうだな‥‥」 獲物を丸ごと飲み込んだ蛇のように満足げなジンの笑いを 最後に映し、カイトは完全に光を失った。 動かなくなったカイトをジンは頬杖をついたまま暫し眺める。 その表情は平素のもので先ほどまでの酷薄な笑いは消えている。 無念を残し顰めたままのカイトの眉を撫ぜ、穏やかになった寝顔に軽く 口付けるとその傍らに身を横たえる。 あんまり面白くてついやり返しちまったが よく考えるとなんか俺が損したような‥‥ 腕を枕に思案顔になるがカイトに視線を移すと表情が和らぐ。 せっかく元のお前に戻ったってのに、お前じゃないお前を抱いても 楽しくもなんともないからな。 思いながら目を瞑り、そのまま深い眠りへ落ちた。 →Next                       (040521) ------------------------------------------------------------------------ →トップ