「出会い」-02
---------------------------------------------------------------
初めて来た街であったが、見慣れた風景だった。
全てが荒んだ灰色の街。
何をするでもなくぼんやりと道端に立つ男達の肌も、
半壊した建物も、そして空までもが乾燥しきって色が無い。
クート盗賊団の情報を持つというこの街のマフィアのボスに会いに来て
つい先程、その会見を終えてきた。
今までの経験からいって、悪い男ではなかった。金を払えば
それに見合うだけの情報をただでくれたのだから。
金を払ったのに「ただで」というのはおかしいのかもしれないが、
何事もなく取引を終えられる例は少ないのだから、ただも同然だ。
しかし、この街は・・・・ダメだ。
スラム街を仕切るマフィアのボスといっても色々で、男気があって
自分の縄張りとそこの住人を大切にするタイプも多い。
そんな街は活気に溢れ、こそ泥もチンピラも、詐欺師も娼婦も
みんな活き活きと仕事に励んでいるものだ。
しかしさっき会った男は金にしか興味がなく、特に非道なマネを
するわけでもないが、街の秩序を保とうという気もないらしい。
帰る家も無く、あちこちに座り込む子供達。
みな痩せて、この街と同じ、埃にまみれたボロボロの衣服をまとってる。
老人のような諦めと無気力に満ちた目。
そんな様子を見て、感傷的な気分になったりはしない。
今俺がこの街の為に出来る事はない。
しかし今目に焼き付けているものを、記憶の収納庫の中でも
決して忘れてはいけないものを収めるスペースにしっかりとインプットする。
と、その時。突然目の端に鮮やかな色が、飛び込んできた。
メインストリートから細い路地を30mも奥に入った突き当たり。
色の無い風景の中で、そこだけが強烈な彩度を放っている。
禍々しいまでの赤。血の色だ。
そしてやっと、その血溜りの上にうずくまる人間の存在に気がついた。
路地の入り口から気配を探る。
・・・・もう息はないな。いや、まて。微かだが・・・・。
近寄り傍らにしゃがんで覗き込むと、まだ少年だ。
血は腰のあたりから流れてでている。どうやら銃でやられたらしい。
細い存在感のない体。
血の色とは対照的に、街に同化したような存在だった。
この血がなければ気づかなかっただろう。
元は金髪であろう肩まで垂らした髪が、埃にまみれて顔を覆っている。
それをそっとすくって表情見ると、眠ってるように穏やかで、
死人のように真っ白だ。しかし、生きている。
簡単な止血をした後、何となく少年の顔に見入ってふと我に返る。
そんな自分をちょっと疑問に思ったが、多分今考えるのは無駄だろう。
猫の子供にそうするように襟足を掴んで軽々と持ち上げると、
そっと肩に担いで路地を出た。
→Next (040222)
----------------------------------------------------------------------------
→トップ
|