悲しい夢U 〜カイトの場合〜
------------------------------------------------------------------------


囁いて

貴方の声で

そうすれば

悲しい夢は見ないから




夢を見た。
目覚めて泣いていると気づいた。
悲しい夢だった。
ジンの背中だけが見えて遠ざかった。

小さく強張った体を背後から抱かれて目覚めた。
瞼を覆うように涙をぬぐわれて
悲しい夢を思い出した。

「‥‥どんな夢?」

眠たげに問う貴方の声。腕の中。

貴方が去っていく夢。
一歩も動けず、泣き叫んだ。
貴方の名を呼んで、だけど声は発せられず
恥も外聞もなく、泣いた。

「‥‥怖い夢」

「‥‥怖い?‥‥‥‥お化けか?」

「‥‥うん」

「そっか」

「‥‥‥‥」

「俺もお化けは苦手だな‥‥逃げるしかねぇな」

「‥‥‥‥」

「ちゃんとお前を負ぶって逃げるから、心配しねぇで寝ろ」

「‥‥‥うん‥」



また夢を見た。
必死の形相で走るジンの背中に俺は必死でしがみつき
何故か笑い転げてた。



もう、悲しい夢は見ない。



end.                                           (041002)
------------------------------------------------------------------------
トップ